目はカメラに例えることができます。その中でカメラのレンズにあたる部分を水晶体(図1)と呼び、ここが濁ってくる病気を白内障(図2)といいます。原因として最も多いのが加齢(老化)によるもので、50歳代から徐々に始まり、個人差はありますが加齢とともに徐々に進行していきます。自覚的には、目がかすんだり、物が二重に見えたり、まぶしく見えるなどの症状を感じ、進行すれば視力が低下します。
図1 水晶体
図2 白内障
高齢化社会になるにつれて白内障になる人も多く、治療方法としては点眼薬が一般的に知られています。しかし濁った水晶体を元に戻す作用はなく、進行を少しでも遅らせる程度の効果しかありません。根本的に白内障を治すには手術が必要です。いまや本邦で行われる白内障手術は年間で約110万件にも達しています。近年の眼科領域における医療技術の進展にはめざましいものがあり、治療においては外来での日帰り手術を可能にしました。
当クリニックでは入院を必要としない、手術時間ができるだけ短く、痛みのない、早期に視力が回復する白内障手術を理想とし、以下の事を実践しています。
図3 ZEISS社 OPMI Lumera
最新の手術顕微鏡と白内障手術機器(白内障超音波乳化吸引装置、図3)を使用。角強膜に切開創(3mm以下、図4)を作り、水晶体前嚢を中心から5mm径で切開除去(図5)する。次に白内障超音波乳化吸引装置のハンドピースの先端を挿入する。 水晶体の濁った核や皮質を超音波の力を利用して細かく粉砕すると同時に眼外へ吸引する(図6)。 水晶体嚢内に残存した皮質を除去した後、眼内レンズ(人工水晶体)を水晶体嚢に挿入し(図7)、切開創を縫合せず、短時間内に手術を終わらせることが可能です。
図4
図5
図6
図7
図8
水晶体の濁った皮質を除去後、嚢内に挿入する人工水晶体( 図8、詳細 )にはいろいろな特徴を備えたタイプがあります。例えば、紫外線を吸収するレンズ、乱視矯正ができるレンズ、遠方、近方とも見えるレンズ等がありますので、医師と相談したうえで個々の生活スタイルに合わせたレンズ、度数選択していきます。
人は誰でも多少の角膜乱視(角膜の歪み)をもっています。白内障手術で角膜乱視を少しでも減少させることが、術後視力を上げるひとつの要因になっています。この装置(図9)の出現によって術式が大きく変わりました。 角膜形状を把握することで、切開部位をかえたり、白内障手術と同時に乱視矯正手術を行ったり、乱視矯正レンズの軸合わせ(図10)を正確にできることや術後経過観察で軸ずれの有無を確認することができるようになりました。
図9(NIDEK 角膜形状 屈折力解析装置 OPD-Scan lll)
図10
図11 TOMEY前眼部OCT CASIA2
図12 前眼部OCTによる前眼部断面図
角膜から水晶体までの形状を3次元撮影ができる最新の検査機器(図11)。1回の撮影で角膜前面から水晶体後面までの断面図(図12)や、角膜と水晶体前後面の曲率半径・厚み・傾きを自動計測が可能。より正確な眼内レンズの度数決定や術後の解析評価ができ、さらに進化した白内障手術を可能にしました。
図13 NIDEK 光干渉式眼軸長測定装置 AL-Scan
挿入する眼内レンズ度数は任意に選択する事が可能です。そのためには角膜曲率(カーブ値)と眼軸長(角膜表面から眼底網膜までの長さ)の数値が必要です。レーザーを利用して測定できる光干渉眼軸長測定装置(図13)は超音波を利用した眼軸長測定装置よりもより正確に測ることができます。これにより、術前、術後の屈折予測値の誤差を最小限にできるようになりました。
手術時は局所麻酔をすることが必要です。目の周りに注射をするのではなく、点眼麻酔薬を使用します。そのため注射針を使わずして術中の痛みを軽減させ、リラックスした状態で手術を行えるようになりました。
原則は1日に片眼のみの手術です。白内障進行度や年齢を加味して相談したうえで、双方の了解のもとに両眼同一日手術をすることも可能にしました。